「伝統の襷を後輩に託す」
平成27年10月に行われた球磨人吉中体連駅伝競走大会で、人吉二中と並んで優勝候補として期待された湯前中陸上部男子。怪我の影響で出場できず、悔しい思いでレースを見守った一人の選手がいた。夏季中体連・郡市陸上3000M優勝など輝かしい戦歴を持ち、湯前中のエースとしてチームを牽引してきた森川勝己君だ。
「メンバーのみんなは良く頑張ってくれた。自分が走れていれば・・・」健闘も3位で県大会出場を逃した。
小学3年生から陸上を始め、近年陸上部の名門として知られる湯前中に入学。社会人や高校で有望選手として活躍する先輩達を見て「自分もあんな選手になりたい」と中学で本格的に長距離走に取り組む。スラリと伸びた身長と、持前の運動能力の高さに負けず嫌いの性格もあり、めきめきと頭角を現す。3000Mが専門で、9分台前半で走る。「将来性があり潜在能力が高い」「これからもっとタイムも伸びるのでは」と関係者は話す。レースでは先頭集団の後ろにわざと距離をとり後半に勝負をかけるレースプランが得意で、相手との駆け引きを楽しむといったスタイルが持ち味。「ただ走るより色々考えて走るほうが楽しいから」と森川くん。一転、普段の練習では先頭にたちチームメイトを引っ張り、ペースメーカー的役割を務めるなどリーダーシップを発揮する。「駅伝は一人では戦えないので」「みんながひとつの方向を目指さないとチーム力も上がらない」と語る。
中学生最後の大会を見守ることしかできなかった自分に「湯前中伝統の襷をつなげなかったのが悔しいし歴代の先輩達に申し訳ない」とチームリーダーとしての責任を重く感じたという。一時は中学で陸上を辞めようと考えた時期もあったというが、「高校でリベンジしたいと言う気持ちに一層火が付きました」「体調管理やコンディション作りをもう一度見直し、頑張りたい」と話した。湯前中伝統の『えんじ色の襷』を後輩達に託し、高い希望とリベンジを胸に高校での飛躍を誓った。