~自分の力を取り戻そう~
昭和34年、平凡社から発行された日本残酷物語の「1・貧しき人々のむれ」に、明治の中ごろまで、東北地方の山村の農民の中には、収穫が少なく娘が一家の犠牲となって売られていった。その潮どきを見計らって、待っていましたと、男の子でも、女の子でも12,3歳になった子どもを、最上地方から人買い老婆がやってきて買っていった。その子どもらを連れまわし、奉公先の買い手を求めて歩いていた、やからの史実が書かれていた。理不尽な環境で、貧しさと悲しさとの苦難に耐えながら日常を暮らしていた事実も描かれている。昔の農民のくらしを悲痛な思いで読み終えた。
そんな時、コロナウィルスの拡大を受け、マスクが品不足でみんなが困っている。それに便乗しマスクを買い集め、通販サイトで5倍の高額な価格で売るやからの報道がなされていた。金儲けだけの価値判断でしかない。一方で、昭和53年秋田県大曲市の農民の暮らしを写真で綴った「米つくりの村」の本に、老農が「百姓はただ働くことによって生きてきた」と語り、農業青年は「この写真に写っている私は、まだ赤ん坊です。あれから三十年近く経ちました。現在の私は自動車もいらないし、金を儲けようと思いません。親たちと一緒に田圃で汗を流し、豚の世話をすることに生きがいを感じています。洋服なんかは他人のお下がりで充分です。去年買ったのは中古のステレオと本箱だけでした。私の使命は、害のない農畜産物を作って消費者に届けることです」と素直な生き方を語っていた。
2月4日の新聞に、元第8代国連難民高等弁務官の緒方貞子さんが、「高等弁務官の最大の仕事は決断することで、判断の根っこにあるのは、人の命を重んじる人間第一の思想。生きていさえすれば、次のチャンスが生まれる。心に決めたら、突き動かされるように行動する。『何かをしないとならないでしょう?したくなるでしょう?理屈ではないのです』」と語られた記事があった。